タクシードライバーはアルバイトでもできる?

タクシー業界は慢性的かつ深刻な人手不足が続いており、タクシー会社の中には正社員でなくアルバイトやパートとしてタクシードライバーになれる企業もあります。このページでは、アルバイト・パートでタクシードライバーとして働くポイントを解説します。

アルバイト・パートという働き方も可能

二種免許が必要で運転のプロというイメージから、タクシードライバーは絶対に正社員でなければ働けないと考えている人もいるでしょう。しかし可能か不可能かでいえば、アルバイトやパートとしてタクシードライバーになることは可能です。

ただし、タクシー会社によってはアルバイトやパート勤務によるタクシードライバーを募集していないこともあり、アルバイトやパートとして勤務するためには最初にそれらの働き方や雇用形態を認めているタクシー会社を探さなければなりません。

待遇はどちらが良い?正社員とアルバイトの違い

そもそも正社員とアルバイト・パート勤務では勤務形態や給与体系に違いがあり、福利厚生などの面でも会社によって差があることもあります。反面、資格については正社員でもアルバイト・パートでも同様に普通自動車第二種免許が必要など、条件的に等しい点もあります。

そのため改めて両者の違いを詳しく確認しておきましょう。

正社員 アルバイト
勤務体系 正規雇用/
隔日勤務
非正規雇用/
日勤・夜勤もしくは希望時間制
給与体系 基本給+歩合給 時給制
必要な
資格
普通自動車第二種免許
(地域によっては地理試験への合格も必要)
普通自動車第二種免許
(地域によっては地理試験への合格も必要)
福利厚生 タクシー会社の定める待遇や雇用条件による 会社によっては福利厚生の対象にならない場合もある

勤務体系の違い

タクシードライバーの特徴でもある勤務体系が「隔日勤務」と呼ばれるものです。これは1日乗務して翌日を休息日とし、さらに翌日はまた乗務するという、勤務と休息が2日1セットになっているスタイルです。一般的に正社員としてタクシードライバーになる場合、勤務体系は隔日勤務となります。

一方、アルバイトやパート勤務はそもそもフルタイムでの働き方を選ばない人々にとってメリットのある雇用形態であり、必然的に勤務体系も労働者の希望する時間帯や、日勤・夜勤など時間帯があらかじめ指定されている範囲となります。

この勤務体系や業務時間の違いは、正社員とアルバイト・パートの間における大きなポイントといえるでしょう。

給与体系の違い

給与体系は会社によって違いもあるものの、一般的に正社員の場合は「基本給(固定給)+歩合給」となり、アルバイト・パート勤務は「時給」となります。

正社員の場合、あらかじめ労働基準法や会社ごとのルールにもとづいて基本の給与額が定められており、さらに個々の売上に応じて歩合給が加算されるという仕組みです。そのため多くの乗客を見つけて収益を増やせば増やすほど給料もアップしていきます。

一方、アルバイト・パート勤務の場合は「時給制」によって給料が支払われており、収入は正社員より少なくなるものの、労働時間に対して安定性があると考えられます。

必要な資格の違い

正社員であってもアルバイト・パート勤務であってもタクシードライバーとして乗務するためには「普通自動車第二種免許」の取得が前提です。ただし正社員の場合は資格取得支援制度を利用できる場合が多くなっています。

また東京などエリアによっては地域の情報などを出題範囲とする「地理試験」を受けて合格しなければならないこともあるでしょう。

なお、資格要件として必須でないものの、英語検定(英検)や外国語検定など特定の資格に対して追加で資格手当を支払われるような場合もあります。

地域や時期によってはライドシェア制度もあり?

ライドシェアは一般ドライバーが自家用車を使って有料で顧客を運べるサービスです。

同制度は日本でも観光地などのタクシードライバー不足を解消するため、2024年4月から東京や横浜といった一部地域で限定的に解禁され、その後も順次拡大が検討されています。ただし、ライドシェアは一般のドライバーでも働けるとされるものの、正規のタクシードライバーの雇用を奪う恐れもあることから全国的には議論の途上であり、実際の制度内容や今後の条件変更については改めてチェックしていかなければなりません。

福利厚生の違い

政府の働き方改革によって日本全国で「同一労働同一賃金の原則」が掲げられており、歩合制を採用しているタクシー業界に対してもコンプライアンス重視の給与体系が求められています。

ただしこれはあくまでも給与に関するルールであり、福利厚生に関しては必ずしも正社員と非正規労働者で同一にされているとは限りません。そのため正社員では認められる福利厚生が、アルバイト・パート勤務では認められないというケースも当然に起こり得ます。

一方、深刻な人手不足を解消するために採用活動を強化しているタクシー会社の中には、アルバイト・パート勤務にも正社員に準じた福利厚生を認めている場合もあるでしょう。

アルバイトでタクシードライバーを選ぶメリット

アルバイトやパート勤務としてタクシードライバーを選ぶメリットは、働く時間や働くペースを労働者が自分で考えやすいという点です。

例えば家事や育児などに時間を割かなければならなかったり、定年後に無理のない範囲で働きたかったりする人にとってはメリットを感じやすくなります。また日々の売上に影響されない時給制であれば、乗客が少なくても一定の給料を受け取れるという点はメリットです。

アルバイトでタクシードライバーを選ぶデメリット

やはりタクシードライバーとして積極的に稼ぎたいと思う人にとって、勤務時間や収入アップのチャンスが限られているアルバイト・パート勤務の働き方はデメリットです。また、どれだけ努力してリピーター客や長距離乗車を獲得しても、歩合制として反映されない点は労働意欲の低下につながるかもしれません。

その他、会社によっては福利厚生を十分に受けられなかったり、資格取得にかかる金銭的支援を受けられなかったりするといったデメリットも考えられます。

アルバイトという働き方が向いているのはどんな人?

正社員の勤務体系に不安がある人

タクシードライバーにおける一般的なテーマとして、隔日勤務のほうが稼ぎやすいという点が挙げられます。そのため収入を優先する人にとっては正社員のほうがメリットも多いと考えられるでしょう。

しかし実際に働いてみると歩合給の部分を思うように上げられず、長時間の乗務をしている割には給与額が高くないというケースも起こり得ます。

そのため特に未経験者など、いきなりしっかりと売上を増やす自信のない人などであれば、まずアルバイトやパート勤務で経験を積むといったパターンも有効です。

副業としてタクシードライバーを始めたい方

タクシードライバーとして積極的に働くよりも、家庭や趣味などワークライフバランスを最優先したい人にとってはアルバイト・パート勤務という働き方も1つの選択肢です。またWワークを認めている会社へ勤めており、空いた時間をタクシードライバーとして働きたいという副業目的の人においても、条件次第では適性があります。

その他にも、隔日勤務が一般的なタクシードライバーですが、長時間の乗務は体力や集中力の問題から不安という人にとっては短時間の労働が最適かもしれません。

地方で仕事を探している人

副業での話題に少し関連しますが、地方では特にタクシードライバーの需要が高まっている場所もあり、例えば観光地では観光シーズンのタクシー不足が深刻化していることもあります。しかし、その一方で地方は都会よりも平時のタクシー需要が限定的な場合もあり、通年の収益性を考えれば地方だけでは厳しいというパターンもあるでしょう。

そのため地方の観光シーズンなど繁忙期を狙ってタクシードライバーとして働き、閑散期は別の地域や業界で仕事をするといった選択もあり得ます。

定年後も働き続けたい人

定年退職後の再雇用を希望する人であっても、現役時代と同じ働き方や職種は体力的に難しいとあきらめているケースは少なくありません。

一方、タクシードライバーは定年した人でも働けるチャンスがあり、またアルバイト・パート勤務として短時間の労働を選択することでワークライフバランスを整えやすいこともポイントです。さらに乗客への対応に長年の社会経験や前職でのスキルが活かされることもあります。

アルバイトのタクシードライバーに関するまとめ

アルバイトやパート勤務としてタクシードライバーになることは可能です。また、条件によっては正社員よりもアルバイト・パート勤務のほうが適しているという人もいます。

しかし長期的に働くための環境や給与額・福利厚生といった面では、やはり正社員の方にこそメリットが多い場合も当然にあります。

そのため、あえてアルバイトやパートでタクシードライバーとして働くことを希望するのであれば、そもそも自分がどうしてタクシードライバーになりたいのか理由や条件をきちんと考えたうえで、福利厚生や人材育成に力を入れているタクシー会社を見つけることが大切です。また、将来を考えて正社員登用の有無についても確認しておきましょう。

   
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