建設業からタクシードライバーに転職するのはアリ？

建設業で働いていると、体力的な負担や人間関係のストレス、労働時間の長さなど、厳しい環境に悩むこともあるのではないでしょうか。「このまま今の働き方を続けていけるのか」と不安を抱えている方も少なくないはずです。

そこでおすすめしたいのが「タクシードライバーへの転職」です。この記事では建設業を辞めたくなる理由や、タクシードライバーに転職するメリットについて紹介します。

建設業を辞めたくなる理由

体力的な負担が大きすぎる

建設業において、体力は仕事を続けていくうえで欠かせない要素です。現場では重い資材や工具を扱うことが日常であり、荷揚げ・移動・設置といった作業が連続して発生します。また、炎天下や寒冷地など気候の影響を強く受ける現場も多く、天候に左右されながら長時間立ち作業を行うこともあります。

特に年齢を重ねてくると、若い頃には感じなかった疲労や痛みが積み重なりやすくなり、「この先も今の働き方を続けられるだろうか」と将来に不安を覚えるきっかけになることもあります。足腰への負担や慢性的な疲労感が積もると、転職を意識し始める方も多くなっていきます。

労働時間が長く、休日が少ない

建設現場では、工期の厳守が最優先される傾向があり、作業工程の進行やトラブル対応のために残業が発生しやすい職場環境です。場合によっては、1ヶ月の残業が100時間を超えることもあり、長時間労働が慢性的になっている現場も見受けられます。

また、週休2日制が標準となっている業界が多い中で、建設業界では「週休1日制」がいまだ主流という現実もあります。特に土曜も現場が稼働している場合は、日曜しか休みがないという状況も珍しくありません。

家庭を持つ人にとっては家族との時間が取りづらく、独身の方でも自分の時間が確保できない生活が続くことで、ワークライフバランスに疑問を感じるようになることがあります。

長時間労働のわりに収入や待遇に満足できない

身体を酷使して、長時間働いて、それでも「給与がそれほど高くない」と感じる人も少なくありません。特に中小企業では、ボーナスや福利厚生の面で大手企業との格差が大きく、生活や将来設計に不安を感じる方も多いようです。

さらに、現場が悪天候で中止になると、その日の給与が支払われなかったり、残業や移動の手当が十分に出なかったりするケースも。「これだけ働いても、報われない」という感覚が積み重なると、他業種への転職を現実的に検討する理由になっていきます。

職場の人間関係にストレスを感じやすい

建設現場では、多くの職人や関係者が協力して一つの工事を進めるため、職場内外の人間関係の調整が日常的に必要となります。特に元請け・下請け・協力会社といった多層的な関係性のなかで、「板挟み」によるストレスを感じるケースも多いようです。

また、現場には年配の職人が多く、昔ながらの体育会系気質や厳しい言葉遣いが残っていることもあります。若手社員にとっては、指導というよりも強い口調で叱責されているように感じる場面もあり、精神的に負担を抱えてしまうこともあるようです。

こうした人間関係の悩みは、業務そのものよりもストレスを感じる大きな要因となり、転職を意識する理由のひとつになります。

事故やケガのリスクがある

建設現場は、常に一定の危険と隣り合わせの環境です。高所での作業や重量物の運搬、重機の操作など、作業ミスや不注意が重大な事故につながる可能性があります。実際に、厚生労働省の統計でも、建設業は他産業に比べて労災発生件数が多い業種のひとつとされています。

安全対策が徹底されているとはいえ、日々の業務で緊張感を持ち続けることは簡単ではありません。「自分や同僚がケガをしたらどうしよう」「家族に心配をかけたくない」といった不安が積み重なり、安心して働ける職場環境を求めて転職を考える人もいます。

将来の働き方に不安を感じている

建設業界では、高齢化が進む一方で若手の入職者が減少傾向にあり、将来的な担い手不足が懸念されています。その結果、ひとりあたりの仕事量が増えたり、現場管理者に過度な負担がかかるといった状況が起こりやすくなっています。

また、近年では建設DX（デジタルトランスフォーメーション）やAI導入といった新しい技術の波も押し寄せており、「これからは自分の経験が通用しなくなるのでは」といった不安の声も聞かれます。

こうした変化のなかで、「このまま同じ仕事を続けていて良いのだろうか」「他の業界でも通用するスキルを身につけたい」と感じ、転職を前向きに考える人が増えています。

建設業からタクシードライバーに転職するメリット

シフトの柔軟さと働きやすさ

建設業では、現場の都合に合わせて早朝から出勤したり、天候に左右されたりと、自分の意思ではコントロールできない働き方が多くなりがちです。長時間労働や休日出勤も珍しくありません。

一方で、タクシードライバーは勤務体系を選べる会社が多く、自分の生活スタイルに合わせて働くことができます。一般的な勤務体系は「隔日勤務」ですが、「昼勤のみで働いて、夜は家族と過ごしたい」「夜勤中心で、効率よく稼ぎたい」といった働き方も可能です。

努力や工夫が収入に反映されやすい

タクシードライバーの給与は、歩合制を採用している会社が多く、売上や乗車件数などの成果に応じて収入が決まる仕組みになっています。これはつまり、「頑張れば頑張った分だけ稼げる」構造であり、成果主義の環境が好きな方には大きなやりがいになります。

どの時間帯・エリアで効率よく営業するか、リピーターをどう増やすか、休憩のタイミングをどう工夫するかなど、自分なりの工夫がそのまま成果につながる仕事です。また、未経験から始める人向けに給与保証制度を設けている会社もあるため、最初の数ヶ月間は安心して仕事に慣れることができるケースもあります。

これまで「頑張っても給料があまり変わらなかった」と感じていた人にとっては、モチベーションを保ちやすい環境といえるでしょう。

一人の時間が多く、人間関係のストレスが少ない

タクシードライバーは基本的に「車内で一人で行動する時間」が長く、職場の人間関係に悩まされにくいのも特徴のひとつです。乗務中は無線や配車アプリを通じたやりとりがあるものの、誰かと長時間一緒に行動することはほとんどありません。

そのため、建設業のように多くの関係者と連携して作業する現場や、上下関係の厳しい職場に疲れてしまったという人にとっては、気持ちの負担を軽くして働ける環境です。

もちろん、お客様とのやりとりはありますが、接客のスタイルは人それぞれ。無理に会話を盛り上げる必要はなく、落ち着いた対応を心がければ問題ありません。

社会から必要とされる仕事である

タクシーは、公共交通機関がカバーしきれないエリアや時間帯での移動を支える、社会にとって欠かせない存在です。高齢者や妊婦、小さなお子さんを連れた方など、「ドア to ドア」の移動手段を必要としている人は多く、また、ビジネスや観光で利用する人も少なくありません。

特に近年は「ラストワンマイル（最終移動距離）」の手段としての需要が注目されており、地域密着型の交通手段として期待が高まっています。

自分の運転や対応が、誰かの生活を支えることにつながっているという実感を持ちやすく、働くことへの意味や誇りを感じやすい点も、タクシードライバーという仕事の魅力のひとつです。

タクシードライバーになるには？

タクシーの仕事に興味があっても、「資格がないと無理なんじゃ？」「未経験からでも大丈夫なのかな…」と不安に思う方も多いかもしれません。ですが、実際にはタクシー業界は未経験者を積極的に受け入れており、建設業からの転職も十分に現実的です。

普通自動車第二種運転免許（いわゆる二種免許）が必要

タクシー業務を行うには、「普通自動車第二種免許（いわゆる二種免許）」が必要です。これはお客様を乗せて運賃を受け取る営業行為を行うために定められた資格で、通常の運転免許（第一種）とは別に取得する必要があります。

ただ「二種免許がないから応募できない」と思われがちですが、実は多くのタクシー会社が「二種免許取得支援制度」を用意しており、入社後に会社のサポートを受けながら免許を取得する流れが一般的です。

教習所の費用は会社が全額または一部負担してくれるケースが多く、さらに、その期間中も「研修扱い」で日当が支給される会社も！

研修制度も充実！地理や接客は入社後に学べる

免許取得後、いきなり乗務を始めるわけではありません。

地理や接客マナー研修、安全運転の指導など、入社後の研修制度が充実している会社が多いため、未経験からでも安心して業務に就くことが可能です。

年齢制限は比較的ゆるやか

タクシードライバーは、他業種と比べて年齢制限が厳しくないのも特徴です。40代・50代から新たにチャレンジする方も多く、年齢よりも健康状態や意欲が重視される傾向にあります。

「体力に少し不安はあるが、まだまだ働きたい」「人との関わりがある仕事をしたい」といった思いを持つ中高年層の方が、第二のキャリアとしてタクシー業界を選ぶケースが見られます。

「給与保証」制度を設けている会社も多い

タクシー業界は歩合制のため、「最初から収入が安定するのか不安…」という声もあると思います。そういった不安を解消するために、多くのタクシー会社では入社後数か月間は“固定給保証”を設定している場合があります。

こうした仕組みがあることで、「まずは慣れることに集中できる」環境が整っているのも、建設業からの転職者にとって心強いポイントです。

建設業の経験が活かせるその他の仕事

製造業・工場勤務

建設業と同じくモノづくりに関わる仕事ですが、建設現場のように重い資材を運ぶことは少なく、屋内での作業が中心なので天候に左右されることもありません。

製造業の多くは、作業内容がマニュアル化されており、黙々とこなす業務が中心です。「怒号が飛び交う現場に疲れた」「静かに仕事がしたい」という方にとっては、一人ひとりの作業が明確に分かれている製造現場は働きやすく感じられるでしょう。

ただし、単純作業が中心になるため、「毎日変化のある仕事が好き」という方には物足りなさを感じる可能性もあります。

トラックドライバー・配送業

「運転が好き」「一人でのびのび働きたい」という方にとって、トラックドライバーや配送業も選択肢のひとつです。大型免許やフォークリフトの資格をお持ちであれば、物流業界では即戦力として評価されます。また、比較的黙々と仕事に集中できる環境のため、人間関係のストレスが少なく、自分のペースで働ける点も魅力です。

また、夜勤手当や長距離手当がある会社も多く、一定の収入を得たいという方にも向いています。

ただし、勤務時間が不規則になりやすいことや、積み下ろし作業が発生することもあるため、求人内容をよく確認することが大切です。

事務職

肉体労働を離れてデスクワークを中心にしたい場合は、事務職が候補になります。冷暖房の効いた室内で、パソコンを使った書類作成やデータ入力が中心となるため、身体への負担は大幅に減ります。ExcelやWordなどの基本操作ができれば未経験でも応募可能な求人もあり、建設業出身でもチャレンジしやすい職種です。

一方で、長時間パソコンに向き合うことが苦手な方や、身体を動かすのが好きな方には、少し退屈に感じることもあるかもしれません。

不動産営業

「対人スキルを活かしたい」「現場経験を説明力に変えたい」という方には、不動産営業や建築関連の営業職も向いています。とくに注文住宅やリフォームを扱う業界では、施工の知識を持った営業担当者はお客様からの信頼を得やすく、説明の説得力や提案力で差別化しやすいのが特徴です。

また、中古住宅の案内時に構造や修繕の観点からアドバイスができるなど、実務経験をそのまま「武器」に変えることが可能です。

営業職は成果が報酬に反映される傾向があるため、成長意欲や向上心がある方にとってはやりがいを感じやすい職種です。もちろん、最初は学ぶことも多いですが、経験を積めば収入面でのステップアップも期待できます。

公務員（行政職・建設技術職）

安定した働き方を重視したい方にとって、公務員は有力な選択肢です。特に、道路や都市計画、建築確認などの業務に携わる「建設技術職」では、民間での施工管理や現場経験がそのまま活かせる場面が多くあります。

たとえば、工事の発注側として業者と連携したり、完成後の検査を行ったりと、これまでとは違った立場から建設に関われるのが特長です。残業や休日の面でも、民間より労働環境が整っていることが多く、家族との時間を大切にしたい方や、将来の生活設計を安定させたい方にとっては魅力的な職場です。

ただし、採用には公務員試験が必要な場合もあるため、準備期間を含めた長期的な計画が必要です。