タクシードライバーが知っておくべき安全運転のポイント
タクシードライバーは色々な乗客を乗せながら公道を車で走る仕事であり、自分だけが安全運転を心がけていても周囲のドライバーのせいで交通事故に巻き込まれるリスクが常にあります。
そのため、タクシードライバーとして真に安全運転を叶えるためには、自分だけでなく周りの状況にも常に気を配って適切に運転することが大切です。
よくある交通事故の原因
どの業界でも経験が浅い間はミスの危険性が増大しますが、新人としてタクシーに乗っている場合も、どうしても事故を避けるために自分の運転に意識を向けすぎたり、乗客に対応するあまり運転に対する注意が散漫になったりといったリスクが高まります。
また、タクシードライバーとして働き方や仕事のペースがつかめていない場合、路上で待っている見込み客を探すことへ集中しすぎて、周囲への配慮や運転マニュアルの厳守がおろそかになってしまうこともあるでしょう。
加えて、ある程度の経験を積んでからも、逆にタクシードライバーとして働くことに慣れてきた油断からついつい安全確認が不十分になってしまう恐れもあります。
公道は自分一人で走っているのでなく、常に周囲に他の車両や運転手がいると意識して、前方確認はもちろん後方確認や左右の確認を徹底し、交通状況や歩行者の様子などに注意することが欠かせません。
安全運転のために意識すべきこと
タクシードライバーとして安全運転を意識する上で、まず空車時、そしてお客様を乗せて走行している時、さらにお客様が乗降する時という3つのタイミングごとに考えることが大切です。
ここでは空車時・乗降時・走行時の3つのパターンに分けて安全運転のポイントをまとめていますので参考にしてください。
空車時
前方不注意にならないよう気をつける
タクシードライバーの事故として多いタイミングが、実は見込み客を探している時など空車時です。
乗客を乗せていないことで緊張感が低下し、同時に見込み客を探して歩道や周囲に意識を向けるあまり、肝心の前方を十分に確認していないケースは少なくありません。
また乗客を見つけられないことで売上減少のプレッシャーがかかることもあるでしょう。
特にタクシードライバーとしての仕事に慣れた人であっても、長時間の運転を続けていると注意力が散漫になってしまい、前方不注意の危険性が高まるため、適度な休息を取りながら安全運転を心がけることが大切です。
お客様の乗降時
安全な位置で停車する
タクシードライバーが事故を起こすタイミングとして、注意すべきはお客様がタクシーへ乗ったり、あるいはタクシーから降りたりする時です。
まず、タクシードライバーの中には乗客のリクエストや接客サービスを優先するあまり、周囲の状況をきちんと確認しないままタクシーを停めてしまう人も少なくありません。その結果、後続車から追突されたり、また周囲の交通を妨害してしまったりといったリスクが高まります。
急に前方で見込み客が手を挙げた際に反射的にブレーキを踏むといったこともNGです。
ドアの開閉時は左後方に注意する
車両を路上の左に寄せて停止したからと安心していると、さらに自車の左側を自転車や原付などが通ろうとしているタイミングでドアを開けてしまって事故につながるかもしれません。
タクシーを運転している間は周囲へ広く意識を向けている人でも、乗客の乗降時にはお客様への対応が頭の中で優先されて注意力が散漫になることもあります。そのような時に自転車などが左後方から迫ってきていると、ドアの開閉によって事故が発生する可能性もあるでしょう。
お客様が乗り降りしたことを確認してからドアを閉める
ピークタイムなど少しでも乗車の回転率を上げたいと思い、お客様を下ろしたらすぐに出発しようとするタクシードライバーも多くいます。
しかし、きちんとお客様が車から降りて路上で立っている状態を確認しないままドアを閉めたり発進したりすると、ドアに巻き込まれてお客様が転倒したり、カバンのヒモなどが引っかかってお客様を引きずったりする危険性が高まるでしょう。
高齢者やケガをしている人のように機敏な動作が難しい人だけでなく、外見的に判別しにくい身体的な不自由を抱える人もいます。そのため先入観で安全だと思い込むことは危険です。
シートベルトの着用をお願いする
道路交通法の改正によって現在は後部座席に座っている人もシートベルトを着用しなければなりません。そして運転中にシートベルトの着用をしていない場合、「座席ベルト装着義務」に違反します。
しかし、それ以上にそもそもシートベルトは乗客の安全を守るための命綱であり、万が一の事故発生時に少しでも被害を低減するものです。
お客様の中にはシートベルト着用を嫌がる人もいますが、誠実にお願いして着用してもらうことが必須です。
走行時
急発進・急ブレーキを控える
まず急発進や急ブレーキはタクシーの乗客にとって非常に不快感をもたらす行為であり、そもそもタクシードライバーとして行ってはいけません。また、急発進や急ブレーキは周囲の交通状況に対して事故のリスクを増大させる危険行為でもあります。
車線へ合流しようと急発進したり、急ブレーキを踏んだりすることで後続車から追突される事故が増大し、また車内でお客様がメイクや飲食などをしている場合、コスメが顔に当たったりストローが喉に刺さったりといった事故につながることもあるでしょう。
カーブはスピードを落とす
カーブを走行中は遠心力がかかって車体がカーブの外側へ引っ張られます。そのため速度や道路の路面状況によってはスリップの危険性が高まるため、必ずカーブの手前で減速して安全な速度で侵入し、スムーズに再加速してカーブを抜けるという運転操作が必要です。
また、カーブへ高速で侵入して曲がると、大きな遠心力がお客様にかかってしまい、お客様の体が傾いて窓ガラスに頭や顔をぶつけるといったトラブルにもつながりかねません。
お客様との会話はほどほどに
走行中にお客様へ楽しんでもらおうと、話しかけられたら積極的に反応して会話を楽しんでもらうことも接客サービスの1つです。しかし、タクシードライバーの目的はあくまでも乗客を安全に目的地へ送り届けることであり、会話に集中しすぎて運転の意識が散漫になれば本末転倒です。
お客様から話しかけられた際に無視することは禁物ですが、自分から発する言葉はほどほどに抑えて、常に安全運転を意識の中心に置いておきましょう。
そのほか意識すべき点
適度な休憩をとる
どれほどベテランのタクシードライバーであろうとも長時間の運転では体力や注意力が低下してしまい、交通事故のリスクが増大します。
特にタクシードライバーは隔日勤務の業務形態で働く人が多く、一度の運転時間が長くなることは少なくありません。また、連続して見込み客を発見してノンストップで走行する場合もあるでしょう。しかし事故を起こせば損失は一層に拡大します。
そのため熱心に働くためにこそ、適度に休憩を挟みながら常に安全な運転を行えるよう自己管理を心がけてください。
自身の運転技術を過信しない
日常的にプロとしてタクシーを運転しているドライバーにとって、自分の運転技術に自信を持ち、乗客のリクエストへ応えられるよう精神的に余裕を持つことは大切です。しかし、その自信が過信に変わった時、注意力は散漫になって思いがけない事故へつながるリスクが増大します。
そもそも自分だけが運転が上手くても道路には多くの人がいて、中には危険な運転をする人もいます。そのため自分の技術を過信せず、注意しながら走行する余裕が肝心です。
常に冷静さを保てるように心がける
どのような人でも興奮したり焦ったりすると、特定の対象へ意識を集中させて周囲が見えにくくなります。しかし、周囲への意識が散漫になれば交通事故の危険性が急増するため、タクシードライバーは常に冷静なマインドで乗務することが欠かせません。
お客様に無茶なオーダーや文句を言われたり、渋滞や迷惑な運転に巻き込まれたりしてストレスを溜めることもありますが、焦らず怒らず気持ちの平静を保ってください。
営業区域の道路・交通情報を収集しておく
自分が営業区域とするエリアの道路状況や交通情報を事前に収集しておくことで、思いがけないトラブルやエラーに遭遇するリスクを減らせます。
突発的な事故渋滞など避けようのない問題もありますが、道路工事の期間を把握しておいたり、混雑しやすい時間帯や道路などを理解しておいたりすることで、余計な渋滞や混雑に巻き込まれて焦ったり乗客の不満を強めたりする可能性を減らせることは大切です。
学校や公園の近くは普段以上に安全運転を心がける
幼稚園や学校、公園といった子どもの集まる施設やエリアの近辺を走行する場合、普段以上に安全運転を心がけて常に周囲へ意識を向けておかなければなりません。
特に、朝や夕方の通学時間にだけ安全運転を行い、それ以外の時間帯は注意力を低下させるといったことは厳禁です。
学校から行き帰りする子どもや周辺を散歩している家族連れなどはどのタイミングで現れるか分からない上、大人には予測できない動きをすることもあるため、常に注意するようにしましょう。
雨天時はスピードを落とし、急な進路変更をしない
雨天時は路面が濡れたり汚れた浮いたりしてスリップの危険性が高まるだけでなく、車の窓ガラスが水滴によって視認性を低下させたり、傘を差している歩行者が周囲の交通状況を見えにくくなっていたりと様々なリスクが増大しています。
また、路面が濡れている状況では制動距離が長くなってしまい、普段は十分に止まれる速度や車間距離であってもブレーキが間に合わないかもしれません。
雨天時は速度を緩め、車線変更や進路変更にもいつも以上に注意します。
降雪時・積雪時は車間距離を十分にあけて、スピードを落とす
降雪時や積雪時は雨天時よりも一層に安全な運転を意識することが不可欠です。
また、冬場などはきちんと天気予報を確認しておき、降雪が予想される場合は早めに対処しておくことも重要です。
どうしても雪が降ったり積もったりしている時に走行しなければならない場合は、雪による影響を考慮して車間距離を確保するだけでなく、速度を落として急ブレーキなどを踏まないようにしましょう。また、周囲の車が近寄ってくれば道を譲るなど、事故に巻き込まれない配慮も大切です。
まとめ
タクシードライバーとして乗務中に限らず、安全運転は常に意識すべきことです。しかしドライバーとしての経験が浅い時期や、逆に業務に慣れてきた時期などはついつい他のことへ意識を向けてしまい、注意力も散漫になりやすくなります。
疲労やストレスなど色々な事情で気持ちが乱れることもあるでしょうが、事故を起こせば余計に損害が大きくなることを理解して、自分で事故を起こさないだけでなく周囲にも起こさせない運転を心がけましょう。
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