タクシードライバーに必要な二種免許とは

タクシードライバーとして働く場合、タクシー会社に就職する場合でも個人タクシーとして事業を営む場合でも原則として二種免許を取得していることが必要です。このページでは、タクシードライバーに必要な二種免許について、資格取得の要件や二種免許取得までの流れなどを解説していますので参考にしてください。

二種免許とは?一種免許との違い

自動車の二種免許とは、単に自動車を運転するための資格でなく、業務として車に人を乗せて目的地まで運び、報酬として対価を得るために必要な資格です。なお、一般的に車の運転に必要な一種免許は普通自動車免許として扱われています。

もちろん、ただ他の人を車に乗せて移動するだけであれば、一種免許を取得していれば可能となります。しかし、仕事として「お客様」を車に乗せて運転するためにはごく一部の例外を除いて二種免許が必須であり、タクシードライバーとして働こうと思えば二種免許を取得することが必要となる点が重要です。

そのためタクシー会社ではすでに二種免許を取得している人を採用するのみならず、二種免許を持っていない人のために資格取得に向けた支援制度を用意している場合もあります。

二種免許の受験資格

二種免許は、言うなれば仕事で自動車を運転するプロとして公的に認められるための資格であり、必然的に通常の運転技術だけでなく業務として車を取り扱い、乗客の安全に責任を負うための知識や経験が求められます。そのため、二種免許の取得要件は普通免許の取得要件も厳しく定められており、基本的に「21歳以上かつ3年以上の運転経験」が必要です。

ただし令和4年5月13日の道路交通法改正によって、特定の条件を満たすことで「19歳以上かつ運転経験1年以上」であれば二種免許を取得できる可能性が広がったこともポイントです。

なお19歳や20歳で二種免許を取得した場合、タクシードライバーとして働ける一方で、21歳に達するまでは若年運転者期間という扱いになることも覚えておきましょう。

二種免許の試験と取得時講習

すでに一種免許を取得している人が改めて二種免許の取得を目指す場合、改めて学科試験と技能試験を受けて合格点数に達しなければなりません。またどちらの試験も一種免許の時より難しくなっていることが特徴です。

学科試験の内容

二種免許の学科試験は一種免許の学科試験と同様に、道交法や車の運転、救護義務といった範囲から出題されます。しかし二種免許の学科試験は一種免許の時よりも応用問題が多くなって全体的に試験の難易度が高くなっており、事前にしっかりと勉強や対策を重ねておかなければなりません。

とはいえ、一種免許の学科試験を受ける際に習った内容と同じ範囲から出題されるため、すでに一種免許を取得している人であれば戸惑いも少なく復習することもできるでしょう。

なお、二種免許の学科試験を受ける前には過去問を解いておき、問題の傾向やどのような応用問題が出題されるのかといった感覚を身につけておくことも大切です。

学科試験は全部で95問、合格ラインは100点満点中90点となります。

技能試験(実技試験)

実際の車両を使って行われる技能試験も、一種免許の教習や試験を受けた時と同じようなものです。ただし一種免許の時よりも二種免許では合格ラインの点数が高く設定されており、採点基準も一層厳しくなっています。そのため普段から自動車を運転して車の取り扱いに慣れている人でも、きちんと対策してポイントをつかんで置かなければ合格することは難しいでしょう。むしろ変な運転や操作が癖になっていると余計に合格しづらくなる恐れもあります。

技能試験は教習所内にあるコースと路上コースでそれぞれ行われ、基本的なチェックポイントは一種免許で技能試験にチャレンジした時と同様にV字・S字や旋回、縦列駐車、方向転換といった項目になります。

取得時講習の内容

一種免許の場合は学科試験と技能試験にそれぞれ合格することで免許が発行されますが、二種免許の場合はさらに各試験の合格後、「取得時講習」という講習を受けなければなりません。

取得時講習は「応急救護処置講習」と「旅客車講習」の2種類が存在しており、どちらの講習もきちんと受けて修了することでようやく二種免許を取得することが可能となります。

応急救護処置講習

応急救護処置講習では緊急時の応急対応や救護措置に関する基礎知識を学び、心肺蘇生法や止血法といった救急処置を実際に体験して身につけることになります。タクシードライバーは一般の人よりも長時間の運転を行うため、必然的に交通事故へ遭遇する可能性も高くなります。応急救護処置の技術はしっかりと覚えておきましょう。

旅客車講習

旅客車講習は所持している一種免許の種類に応じて「普通・中型・大型」といった区別がされており、それぞれの免許によって講習内容も異なります。

二種免許の難易度・合格率

警察庁が公表している「運転免許統計(令和4年版)」を参照すれば、二種免許の合格率は54.1%となっており、およそ半数の人しか試験に合格することができない模様です。なお、普通一種免許の合格率は74.5%となっており、一種免許で約4分の1の人が試験に失敗し、二種免許では約2分の1の人が試験に失敗すると考えると、見方によっては一種試験よりも倍の難易度になっているともいえるでしょう。

とはいえ、言い換えれば半数以上の人は二種免許の試験に合格しているため、きちんと勉強して対策すれば決して取得不可能なものではありません。

二種免許の取得方法とかかる期間・費用

二種免許の取得方法は一種免許の時と同様に、教習所へ通う場合と直接に免許センターで受験する場合の2パターンが考えられます。また、それぞれのケースによって取得にかかる期間や費用にも違いが生じるでしょう。

教習所に通わず試験を受ける(一発試験)

教習所へ入所せず、直接に免許センターで試験を受けて合格すれば、二種免許を取得することが可能です。

一種免許の時と異なり、二種免許ではすでに自動車を運転できるため、自分なりに訓練を積んで技術を習得することはできます。ただし二種免許の技能試験は一種免許の試験時よりも採点基準が厳しくなっており、独学による一発試験で合格を目指すにはなかなかハードルが高いことも事実です。

なお免許取得にかかる費用は受験料や手数料などを合わせて4万円程度となりますが、当然ながら一度で合格できなかった場合は再試験の費用がかかるため、失敗を繰り返すほどに期間と費用が増大します。

自動車教習所で取得する

一種免許と同様に自動車教習所へ通って試験を受け、二種免許を取得することも可能です。基本的な流れは一種免許の時と同様になるため、一種免許の試験を教習所で受けた人であれば違和感は少ないと考えられます。

ただし、そもそも二種免許のカリキュラムに対応している自動車教習所を見つけなければならない上、免許取得にかかる費用は当然ながら一発試験を1回で合格した場合よりも高額になります。また教習所のスケジュールに合わせて講習を受けるため、予約状況などによっては取得までの期間が長引く可能性もあるでしょう。

とはいえ教習所では試験で注意すべきポイントなどをきちんと指導してくれるため、真面目に受講していれば一発試験よりも合格率は高まります。

二種免許資格取得制度を設けている会社もある

少子高齢化が続く中でタクシー業界でも人材不足が深刻化しており、タクシー会社では積極的なタクシードライバーの確保を目指して、未経験者などのために二種免許資格取得制度といったサポート制度を設けているところが増えています。

二種免許資格取得制度のあるタクシー会社へ就職すれば、二種免許の取得に向けた訓練や費用をサポートしてくれる上、従業員として給料を受け取ることも可能なので、まだ二種免許を取得していない人にとっては利用価値があるでしょう。

二種免許がなくても乗客を乗せて運転できる「ライドシェア制度」

タクシー業界の人材不足や観光地でのタクシー不足といった課題に対して、日本政府は2024年4月から一部エリアにおいて条件付きで「二種免許を取得していない人でも自家用車を使用して有料で人を運べる」というライドシェア制度をスタートします。

そのため将来的には二種免許を取得せずともタクシー業務に近しい仕事をできる可能性もあるでしょう。ただし、ライドシェア制度はあくまでも議論が継続中の制度であり、安定してタクシードライバーとして働くためにはやはり二種免許の取得を目指すことが合理的です。

まとめ

車に人を乗せて有料で運ぶタクシードライバーとしての仕事は、一般のドライバーが日常生活の中で車を運転するよりもはるかに責任や技術が重視される専門職であり、そのための技能を公的に示す証が二種免許です。

二種免許の取得は一種免許よりも難易度が高いですが、取得すればキャリアアップへつながるため、しっかりと対策して試験の合格を目指していきましょう。

   
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