タクシー業界の現状
今後ますます、世の中にとって必要になっていくと予想されるタクシー業界の需要。タクシー業界でもIT化が進んでおり、時代の流れに足並みをそろえるように新たなサービスが生み出されるなど、タクシーのあり方も進化することが求められています。そのためには、どのような課題を乗り越えなくてはならないのでしょうか。
ドライバーの不足
原因
タクシードライバーの高齢化が進むなか、タクシー事業者の中には保有する車両数に見合ったドライバーを確保できず、車両稼働率の低下を余儀なくされている事業者もみられます。また、高齢者ドライバーのなかには年金受給者やダブルワークの一環としてタクシードライバーをする人たちも多く、平均年収を下げているという問題もあります。
しかし、こうした課題を背景に、国土交通省でもタクシー事業活性化に向けた取り組みをはじめており、タクシーの利便性の向上、タクシードライバーの平均年齢の若返りや増加に向け、ライドシェア導入などの実証実験や施策を打ち出しています。
解決できるのか
このように、中高年やシニア層のイメージが強いタクシードライバーですが、一方で、タクシー業界ではドライバーの若返りはもちろん、アプリ配車などの先端テクノロジーへの対応や外国人観光客に対する多言語コミュニケーションなどに適応できる新卒採用も積極的におこなっています。
格差の拡大
原因
タクシー業界が直面している課題には、人口減少、コロナ(新型コロナウイルス感染症)拡大などによる乗客数の減少や人手不足によるサービスの低下、キャッシュレスやDX対応の遅れ、台数不足による配車機会損失など、多くの課題を抱えています。
また、タクシー業界全体では、車両数の少ない小規模事業者の比率が高く収益性が低いため、人材の採用や育成、UD車両(※)への更新など、課題解決に向けた投資余力という面において、大手事業者との格差が拡大しています。さらに、タクシーは公共料金として国から運賃が定められているため、運賃を上げることもできません。
※健康な方はもちろん、妊娠中の方、高齢者や車いす利用者、ベビーカーでも利用しやすい車両で、ユニバーサルデザインタクシーともいわれています。
解決できるのか
深刻化する一方の高齢化により、タクシーは日常的な移動手段の確保にまで業務を拡大させる必要性に迫られており、地方では行政がカバーできない輸送を求められるなど役割が多様化していく中で、現存するドライバーの高齢化もすすんでいます。
そんな中、需要の減らない都市部でも、どのタクシーアプリに属するかが勝敗を決めるとまでいわれており、タクシー会社の格差も拡大しています。さらに、主要駅への乗り場など、稼げる所には優良マークのついたタクシーしか並べないといった現象も出始めており、タクシー会社だけでなく、ドライバーの格差も拡大しつつあり、今後もなんらかの解決が求められています。
労働時間は守られているのか?
タクシードライバーの勤務体系は、隔日勤務が一般的です。隔日勤務とは2日勤務して1日休むという働き方ですが、昨今では日中だけの日勤や、夜だけの夜勤など選択肢も多くなっています。
労働時間は法律によって定められており、厳密に管理されているため、法定時間以上は乗務できないようになっています。
帰社後には洗車や掃除、報告書の作成などの業務もあるため、乗車している時間以外にも勤務時間がありますが、乗車する時間は法律で決まっているため、サービス残業や無理な長時間乗車といったことはほとんどないでしょう。タクシードライバーの場合、労働時間の超過が安全性に直結するため、タクシー業界としても労働時間は守るように努めているはずです。
タクシー独特の「隔日勤務」については、2日に1日休めるため、若い男性には歓迎される傾向にあります。生活リズムが掴みにくい、家族と時間が合わないなどの問題もありますが、平日に休みが取れるというのはメリットと言えます。
女性ドライバーが増加し、日勤を採用しているタクシー会社も増えています。
理不尽なお客はいるのか?
タクシードライバーは単に目的地まで運転すればよいだけの仕事ではなく、接客業でもあります。基本的にお客は選べないので、中には理不尽なことを言われることがあるのも事実でしょう。
ただし、どんな業界や職種でも理不尽なお客はいるものです。タクシードライバーの場合、目的地までの短い時間であり、二度と顔を合わせることもないお客様なので、ストレスの度合いからすれば低い方といえるでしょう。タクシーを利用するお客の方も、目的は移動することですから、ドライバーにしつこく絡む時間はないはずです。
ときには迷惑なお客様や理不尽なお客がいることは事実ですが、乗せるたびに嫌な思いをすることは少ないと想定できます。
大抵のお客様は一般的な常識人であり、まれにチップをもらえることもあります。楽しい話で盛り上がることもあるので、嫌なことばかりある辛い仕事ということはありません。
夜勤の場合の酔客などには、対応の仕方を考えておくと良いでしょう。
実際の所どれくらい稼げるのか?
タクシードライバーの給与体系は、大きく分けて3つのパターンがあります。
- A型賃金:固定給+歩合給+各種手当+賞与
- B型賃金:完全歩合制
- AB型賃金:A型+B型
A型賃金は、固定給があるため入社後すぐであっても安定した給料が入ってきます。ただし歩合率はそれほど高くないため、大きく稼ぐこともできないというデメリットもあります。
B型賃金は完全歩合制なので、稼いだ分が給与に反映されます。とはいえ、タクシードライバーの平均年収は350〜450万円といわれていますが、優秀なドライバーなら年収800万円以上という方もいるようです。タクシードライバーとしてのセンスがあれば、1年目から年収400万円以上稼ぐことも可能です。
AB型賃金はA型とB型のいいとこ取りをした給与体系です。ベースは歩合制ですが、固定給も賞与ももらえるため、収入が安定しやすくなります。がんばった分は歩合給と賞与に反映されるので、モチベーションも維持しやすいでしょう。
タクシードライバーの自由について
タクシードライバーは隔日勤務で働く場合、拘束時間が21時間以内と決められており、1回の勤務時間は非常に長いです。しかし、その後には20時間以上休まなければならないことが定められているため、休みも多く取れます。
また、勤務中も基本的にどこをどう走るかは自由です。お客様を乗せると目的地に向かって運転しますが、誰も乗せていない間は一人なので自由度は高いといえます。休憩や食事タイムも自分の裁量で決めることができます。
コロナ禍を経て、今後のタクシー業界の動向は?
コロナ禍による社会的制約と経済的打撃にもかかわらず、タクシー業界は概ね堅調な成長を示しています。一方で、今後の動向にはいくつかの課題や変化が予想されています。以下に、コロナ禍を経て今後のタクシー業界の動向について解説します。
経済活動の回復と需要の回復
コロナ禍での外出自粛やテレワークの増加などにより、タクシー業界にも大きな影響が出ましたが、2022年以降の経済活動の回復とともに需要の回復が期待されています。需要の回復に伴い、タクシー会社は顧客満足度を高めるサービス提供に注力することで、市場競争に勝ち抜く必要があります。
AIや自動運転技術の普及
タクシー業界には、AIや自動運転技術を取り入れた新しいサービスが登場しています。これにより、ドライバーの負担軽減や、運転中の安全性向上、顧客満足度の向上などが期待されます。また、自動運転技術の普及により、運転手不足問題を解決することもできます。
顧客ニーズの変化
コロナ禍での感染リスクを避けるため、顧客の一部は公共交通機関からタクシーに乗り換える傾向がありました。今後も、感染リスクや交通渋滞への対策、高齢者や障がい者向けのサービスなど、顧客ニーズに合わせたサービス提供が求められます。また、配車アプリの普及により、顧客のニーズや要望を的確に捉えるための情報収集と分析が重要となります。
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