タクシードライバーの研修ってどんなことをするの？

タクシー会社に入社しても、すぐに運転できるわけではありません。まずは段階的な研修を通じて、安全運転技術はもちろん、接客サービスや地域知識など、さまざまなスキルを習得していきます。

この記事では、タクシー会社で行われる主な研修の内容や流れについて詳しく解説します。

タクシードライバーの研修の流れ

研修は法令で定められた必須項目と、各社独自の教育プログラムを組み合わせて実施されます。タクシー会社によって具体的な研修内容や期間は異なりますが、一般的な研修の流れは以下の通りです。

1. 普通自動車第二種免許の取得
2. 運転者適性診断の受診
3. 地理試験への対策（必要な地域の場合）
4. 接客や機器操作などの実務研修
5. 実車を使用した教習
6. 配属先での実地研修

これらの基本研修に加えて、会社独自のサービス内容や営業方針に関する研修、さらには観光案内や外国人観光客への対応など、専門的なスキルを習得するための研修が行われることもあります。

タクシードライバーの研修内容

普通自動車第二種免許の取得と適性診断

プロのタクシードライバーになるための第一歩は、「普通自動車第二種免許（二種免許）」の取得です。この免許は、お客様を乗せて営業運転を行うために必要な資格です。教習所での学習が基本となりますが、多くのタクシー会社では、教習所の費用負担や学習サポートなどの支援制度を設けています。

二種免許の取得には、普通免許を取得してから3年以上の運転経験が必要です。また、21歳以上という年齢制限もあります。教習では、より高度な運転技術や安全管理、道路交通法規などについて学びます。

免許取得後は、自動車事故対策機構（NASVA）で運転者適性診断の受診が必要です。この診断では、安全運転に必要な適性が総合的にチェックされ、結果に基づいて必要な指導や助言を受けることになります。

地理試験への対策

東京都や大阪府、神奈川県など、一部の地域では「地理試験」に合格する必須となっています。地理試験は、担当エリアの道路や施設の位置関係だけでなく、関連する法令の知識も問われる試験です。試験内容は地域によって異なりますが、いずれも合格基準は厳格に設定されています。

多くのタクシー会社では、地理試験対策として独自の研修プログラムや教材を用意しています。主要な施設や道路の位置関係、効率的な移動ルートなどを、実地研修と座学を組み合わせながら学んでいきます。また、観光スポットや名所旧跡についての知識も、お客様への案内に役立つ重要な学習項目です。

接客や機器操作などの基礎研修

二種免許の取得や地理試験の合格は、タクシードライバーとしての入口に過ぎません。実際の業務では、安全な運転技術に加えて、質の高い接客サービスを提供することが求められます。

そのため基礎研修では、まず接客の基本となるビジネスマナーを学びます。お客様への適切な言葉遣いや態度、車両の乗り降りの際の補助方法、荷物の扱い方など、細かな点まで丁寧に指導を受けます。

また、タクシー車両にはさまざまな専用機器が装備されています。料金メーターの操作はもちろん、配車システムの使い方、無線やGPSナビゲーションの操作方法なども、実践的な訓練を通じて習得していきます。

さらに、事故や急病人の発生など、緊急時の対応方法についても知っておかなくてはいけません。救急車の手配方法や応急処置の基礎知識、保険会社への連絡手順など、さまざまなケースを想定した訓練を行います。

実車を使用した教習

基礎研修で学んだ知識やスキルを実践的に身につけるため、実際のタクシー車両を使用した教習が行われます。この段階では、経験豊富な指導員が同乗し、実務に即した細かな指導が行われるのが一般的です。

実車教習では、お客様を安全・快適に目的地までお送りするための具体的なテクニックを学びます。スムーズな発進・停止の方法、乗り心地を考慮した運転操作、効率的な経路選択など、プロのドライバーとして必要な技術を、実践を通じて習得していきます。

また、乗務前の車両点検から、乗務終了時の精算業務まで、1日の業務の流れを実地で確認。道路状況に応じた安全確認の方法や、夜間走行時の注意点なども、実際の道路を走りながら学んでいきます。

配属先での実地研修

基本的な研修を終えた後は、実際に働く営業所での実地研修が始まります。ここでは、その地域特有の道路事情や、お客様の需要が多いスポット、効率的な営業方法などを、実践的に学んでいきます。

ベテランドライバーに同乗させていただき、実際の接客場面を観察したり、独自のノウハウを教わったりすることも。また、営業所特有の運行ルールや、地域の特徴的なイベント情報なども、この段階で詳しく把握していきます。

タクシードライバーの研修に関するよくある疑問

研修期間中の給料は支払われる？

研修期間中も、タクシー会社の従業員として適切な給与が支払われます。給与体系は会社によって異なりますが、多くの場合、日給制や時給制が採用されています。研修期間中の具体的な待遇は、求人情報に明記されているのが一般的です。

また、二種免許の取得費用について、全額会社負担や一部補助などの制度を設けている会社も多くあります。研修期間中の待遇は、入社を検討する際の重要なチェックポイントの一つです。

タクシードライバーの経験者でも研修は必要？

他社でのタクシードライバー経験がある方でも、新しい会社に入社する際には一定の研修が必要です。ただし、経験や実績に応じて研修期間が短縮されたり、研修内容が調整されたりすることがあります。

特に、営業地域が変わる場合は、その地域の地理や特徴を学ぶための研修は必須となります。会社独自のサービスや機器の操作方法についても、しっかりと習得しましょう。

研修の合格ラインは？

研修の合格基準は、法令で定められた必須要件と、会社独自の基準の2つに分けられます。二種免許の取得や地理試験の合格など、法令で定められた要件は、必ずクリアしなければなりません。

一方、接客サービスや運転技術については、会社ごとに独自の基準が設けられています。ただし、いずれの会社でも、お客様に安全で快適なサービスを提供できるレベルに達していることが、研修終了の最低条件となっています。

まとめ

タクシードライバーは、運転のプロであると同時に、接客のプロとしての役割も求められます。そのため、入社後の研修では、安全運転技術だけでなく、接客マナーや地域の知識など、幅広いスキルを総合的に習得していきます。

研修期間は決して短くありませんが、この期間に身につけた知識と技術が、プロのドライバーとして活躍するための確かな土台となるでしょう。研修で学んだことを日々の業務で実践しながら、さらなるスキルアップを目指していくことが、タクシードライバーとしての成長につながっていきます。