タクシードライバーの保険
タクシードライバーは運転時間が長い仕事のため、「事故を起こしたらどうなるのだろう」「保険は自分で入るの?」と不安を感じる方も多いかもしれません。
けれど実際には、タクシードライバーの保険は個人がすべてを背負う仕組みではなく、あらかじめ守られる制度が整えられています。この記事では、タクシードライバーの保険について詳しく紹介します。
タクシードライバーは「保険に守られながら働く」仕事
タクシーとして営業するためには、自賠責保険だけでなく、任意保険への加入が法律で義務づけられています。そのため、タクシー会社に所属して働くドライバーは、無保険の状態で運転することはありません。
多くの場合、タクシー会社があらかじめ加入している保険や共済の対象となります。入社後は、会社の指示に従って書類を記入する程度で、業務に必要な補償が整います。ドライバー個人が保険を選んだり、手続きを進めたりする必要はほとんどありません。
タクシードライバーに関係する主な保険の種類
タクシーの仕事では、主に次のような保険が関わってきます。
自賠責保険|すべての車に義務づけられている保険
自賠責保険は、すべての自動車に加入が義務づけられている保険です。交通事故によって、相手方を死傷させてしまった場合の最低限の補償を目的としています。
ただし、自賠責保険だけでは補償額に上限があり、事故の内容によっては十分とはいえないケースも少なくありません。そのため、タクシーのように営業目的で人を乗せる車両では、自賠責保険だけで業務を行うことはできません。
任意保険|タクシー業では加入が必須とされている保険
タクシー業では、自賠責保険に加えて任意保険への加入が法律上必須とされています。これは、万が一事故が起きた際に、乗客や第三者への補償を十分に行うためです。
国土交通省によって、対人・対物の補償金額についても一定の基準が定められており、タクシー会社はその条件を満たした任意保険に加入しなければ、営業許可を受けることができません。
タクシー会社に所属して働く場合、この任意保険は会社側が加入しており、ドライバー個人が保険内容を選んだり、保険料を直接支払ったりするケースはほとんどありません。
タクシー共済|業界特有の相互扶助の仕組み
タクシー業界では、一般的な保険会社の任意保険とは別に、「タクシー共済」と呼ばれる仕組みが利用されていることも多くあります。タクシー共済は、タクシー会社や協同組合が中心となって運営する制度で、組合員同士が支え合う相互扶助の考え方をベースにしています。
業務内容や事故の発生状況を前提に設計されているため、タクシードライバーの仕事に合った補償を受けやすい点が特徴です。
タクシー共済と一般的な自動車保険の違い
タクシー共済と、一般的な保険会社が提供する自動車保険には、いくつかの違いがあります。
非営利で運営されているため、保険料が抑えられやすい
タクシー共済は、営利目的ではなく、組合員の相互扶助を目的として運営されています。そのため、一般的な自動車保険と比べて、保険料が比較的抑えられているケースが多く見られます。
多数の車両を保有するタクシー会社にとっても、コストを抑えながら必要な補償を確保できる点は、大きなメリットといえるでしょう。
事故対応がタクシー業務に即している
共済の運営には、タクシー業界に長く関わってきた人が携わっていることも多く、事故対応や示談交渉の場面では、タクシードライバーの業務特性を理解したうえで対応してもらえる場合があります。
そのため、事故後のやり取りが比較的スムーズに進みやすいと感じるドライバーも多いようです。
等級の引き継ぎには注意が必要な場合も
一方で、タクシー共済の加入には注意しておきたい点もあります。共済から一般的な自動車保険へ切り替える際、保険の等級がそのまま引き継げないケースがあります。
将来的に個人タクシーを検討している場合や、業界を離れて一般の自動車保険に戻る可能性がある場合には、こうした違いがあることを知っておくと安心です。
もし事故が起きた場合、誰が責任を負うのか
タクシードライバーを目指すうえで、「もし事故を起こしてしまったら、賠償金を自分で支払うことになるのでは?」と心配になる方は少なくありません。
しかし、業務中に起きた事故については、法律上、原則としてタクシー会社が賠償責任を負うことになっています。これは民法や自動車損害賠償保障法に基づく考え方で、タクシードライバー個人ではなく、事業者である会社が責任主体となるためです。
そのため、通常の業務中に事故が発生した場合、ドライバー個人が多額の賠償金を直接支払うケースは、一般的にはほとんどありません。事故後の対応についても、会社や加入している保険・共済の担当者が中心となり、示談交渉や手続きが進められるのが基本です。
例外として知っておきたいポイント
とはいえ、すべてのケースでドライバーに影響がまったくないわけではありません。会社によっては、事故の内容や過失の程度に応じて、無事故手当が支給対象外になったり、一定の社内ルールが設けられていたりする場合があります。
また、事故の報告方法や対応手順を守らなかった場合など、会社の規定に反する行動があったときには、注意や指導を受けるケースも考えられます。
こうした点は、法律や保険制度というよりも、会社ごとの方針や考え方による部分が大きいのが実情です。そのため、転職を検討する際には、事故が起きた場合の対応方針やペナルティの有無についてあらかじめ確認しておくと、入社後の不安を減らすことができます。
万が一事故を起こしてしまったときの対応
どれだけ気をつけて運転していても、タクシードライバーの仕事では、思いがけず事故に遭遇してしまう可能性があります。そんなときに大切なのは、慌てず、冷静に行動することです。
まずは人命と安全の確保を最優先にする
事故が起きた場合、最優先となるのは、乗客や相手方、自分自身の安全確認です。けが人がいる場合には、速やかに救急車を呼び、必要に応じて警察へ連絡します。
軽微な事故に見える場合でも、後から体調に影響が出ることもあるため、自己判断せず、状況に応じた対応を取ることが大切です。
会社へ連絡し、指示に従って対応する
安全の確保と初期対応が終わったら、所属しているタクシー会社へ事故の報告を行います。その後の対応については、会社の事故担当者や管理者から具体的な指示が出されるのが一般的です。
多くのタクシー会社では、事故の連絡先や報告手順が明確に決められており、ドライバーはその指示に従って行動すれば問題ありません。
示談交渉や保険手続きは会社・保険が中心となる
事故後の示談交渉や保険会社とのやり取りについても、基本的にはタクシー会社や加入している保険・共済の担当者が中心となって進めます。
ドライバーが個人で相手方と交渉したり、賠償内容を判断したりする必要はほとんどありません。
個人タクシーの場合は自己対応が必要な場面もある
一方で、個人タクシーとして働いている場合は、会社所属のドライバーとは異なり、事故対応や示談交渉を自分で行う必要が出てくるケースもあります。
そのため、個人タクシーでは、弁護士費用を補償する特約などを付けておくことで、万が一の際の負担を軽減しやすくなります。
事故を起こしてしまったあと、、仕事や収入はどうなる?
事故を起こしてしまった場合、「しばらく働けなくなるのではないか」「収入に大きな影響が出るのでは?」と不安に感じる方も多いかもしれません。
実際のところ、事故の内容や状況によって対応は異なりますが、軽微な事故であれば、必要な手続きが終わったあと、通常どおり乗務に戻れるケースも少なくありません。大きな事故の場合でも、いきなり仕事を失うというよりは、一時的に乗務を控え、会社の判断を待つ流れになることが一般的です。
収入面についても、会社の制度によって差はありますが、事故を起こしたからといって、すぐに生活が成り立たなくなるようなケースは多くありません。多くのタクシー会社では、事故後の対応や乗務再開までの流れがあらかじめ決められており、ドライバーが一人で抱え込まなくて済むよう配慮されています。
ただし、無事故手当や歩合給など、成績に連動する部分については事故の影響を受ける場合もあります。その点は会社ごとに考え方が異なるため、事前に確認しておくと安心です。
いずれにしても、タクシードライバーの仕事は、事故のリスクを前提にした制度やサポート体制のもとで成り立っています。万が一のときも、仕事や収入をすべて失うような働き方ではないということを、事前に知っておくことが、不安を和らげる大きなポイントになるでしょう。
まとめ
タクシードライバーの仕事は、運転時間が長い分、事故のリスクをゼロにすることはできません。しかし、そのリスクを前提に、自賠責保険・任意保険・共済といった仕組みが整えられており、ドライバー個人が無防備な状態で働く仕事ではありません。
業務中の事故による賠償責任は、原則としてタクシー会社が負い、事故対応や示談交渉も会社や保険・共済が中心となって進められます。そのため、転職を考える段階で過度に不安を感じる必要はないでしょう。
一方で、事故時の扱いや社内ルールは会社ごとに異なる部分もあります。保険制度の仕組みを理解するとともに、入社前に事故対応の方針を確認しておくことで、より安心してタクシードライバーという仕事を選ぶことができるはずです。
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